「街とその不確かな壁」あるいは洞窟の比喩と心の奥

2025/05/11

雑記

 

村上春樹の「街とその不確かな壁」(新潮社)を読んだ。

出版された2023年3月、すぐに購入して読み始めたら、なんだか昔読んだ「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」にそっくりな感じがして、つまらなくてやめてしまった。

2年以上経ったこのゴールデンウィーク、なんとなく暇というか、気の滅入ることが続いていたので気分転換にと最初から読み始めたら、面白かった。

いつも通り、心の奥、物語がテーマだが、なるほど70歳を超えて書く内容だと思った。

心の奥と物語。

本物と影。移ろいゆく心。どちらがどちらか分からない状態。現実と心の中が交錯する。交錯するというかどちらも現実。

ちょっと荒唐無稽かもしれないが、わたしはプラトン「国家」に出てくる洞窟の比喩みたいだという感想を抱いた。

そう、昨年読んだ「新版 プラトン 理想国の現在」納富信留(ちくま学芸文庫)がすごく面白かったからかも。タイトルの「理想国」というのは、国家つまりポリテイアのこと。

さらに、心については「生成と消滅の精神史」下西風澄(文藝春秋)をもう一度読み直そうという気持ちになった。

この本は、わたしがここ3年で読んだ中で、だんとつで一番面白い本だ。

当時の新聞の書評(多分新潟日報だったと思う)

「書評でこんなことを書くのは初めてだし、全く芸のない話だが、この本は、とてつもなく面白かった。ご一読を」

書評委員がこう評していて、本当に身も蓋もない話ではあるが、読んでみると本当にそれくらい面白い。

これを読み直す前に、数年前から積ん読状態になっていた、「アウグスティヌス『心』の哲学者」出村和彦(岩波新書)という新書本を読み始めた。心の奥。アウグスティヌスはわたしの卒論なのでおなじみの話で親しみやすい内容だが、卒論を書いてからちょうど30年経っているので、なんだか新鮮な感じもする。

新しいローマ教皇がO.S.A.(聖アウグスチノ修道会 Ordo Sancti Augustini)だったこともあって、あらためて読んで見ようと思った。

「生成と消滅の精神史」と新教皇の話は別に書く。





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