昨年、週刊文春で連載していて、リアルタイムで読もうかどうか迷った結果、単行本になるのを待った。
SNSによるいわゆる「言葉の暴力」。
古された表現だが、「言葉の暴力」という古典的用法より、SNS上では段違いに激しく暴力的になっていて、もやや「言葉の」というのが適当ではない。「投稿の」というべきか。
テーマの設定、細部の描写などなどはすばらしいし、すごく面白い。ただ、全体に話がよくできていすぎていると感じる。
わたしはミステリーというジャンルが苦手でほとんど読まないが、そうしたジャンルにあるいわゆる「伏線回収」的なつくりがよくできすぎていて、せっかくの息を呑むようなリアリティーとのバランスが悪いような気がする。
こうした小説では、伏線なんか回収しなくていい。そのほうがなんていうか文学的なときもある。まあ、これらはまったくわたしの好みの問題だが。
とはいえ、この本は面白い。人にすすめられる。
さて、この著者については昨年、「罪の声」(講談社文庫)を読んだ。たまたま入った古本屋に100円で売っていたので。
グリコ森永事件を題材にしたノンフィクションのような小説。
声という切り口が面白く、これも面白い本だった。1年前に読んだので忘れたが、こっちのほうがリアリティーがあったように思う。
でもテーマなどトータルには「踊りつかれて」の方が勝っている。